第19話 師法然との別れという出遇い
越後での生活にも慣れ、越後の人々との交流も日々深まりゆく親鸞聖人。
建暦元年(1211年)11月、親鸞聖人は師法然上人と供に赦免されます。流罪から5年が経とうとしていました。聖人39歳の頃のことです。
親鸞聖人は、法然上人との再会を夢見ます。しかし、時は11月。雪深い越後の冬です。自分一人京に戻ることも困難です。ましてや家族もいます。聖人は、春が来て雪がとけるのを待つことにしました。
法然上人は赦免され、土佐から京の都へ戻りました。しかし、帰洛後間もない建暦2年1月25日、法然上人はお浄土に還られました。
上人の訃報を聞いた親鸞聖人は悔やみます。
「どうしてすぐに上人さまに会いに行かなかったのか…」
悲しみに暮れる聖人でしたが、越後の人々の姿を見て、立ち上がります。
「上人さまのおかげで、会えるはずのなかった越後の人々と出遇うことができた。その出遇いを通して、あらためて上人さまやお念仏の教えの有り難さに目覚めることができました。そして、流罪に処した者に対する怒りに震える この私自身を見つめることができました。法(教え)に出遇うことがなかったならば、私はどうなっていたことでしょうか…」
死別とは、永遠の別れを意味します。しかし、別れを通して教えられること、出会えること、感じられることがあります。そのような こころの動きがあったとき、別れの中に、新しい出遇いがあります。永遠の出遇いが。